
2025年3月、MUFGイノベーション・パートナーズ(MUIP)は、AIを活用した顧客体験の最適化プラットフォームを提供するテクノロジー企業Auxiaへの出資を発表した。Auxia (オクシア)は、2022年の創業以来急成長を遂げており、現在は米国カリフォルニア州パロアルトに本社を、インド・ベンガルールに開発拠点を構える。
Auxiaは、企業が保有するファーストパーティーデータを最大限に活用し、AIによるリアルタイム意思決定を通じて顧客体験全体を最適化するプラットフォームを提供している。オンボーディング、機能導入、継続利用、解約防止など、マーケティングやプロダクトの各局面におけるエンゲージメントの高度化と効率化を実現している。
創業について
Auxiaの共同創業者は、Googleのマーケティング領域で活躍したサンディープ・メノン(CEO)と、Metaでチャットサービスのエンジニアだったラヴィ・デス(CTO)で、AIでマーケティング領域に変革を起こすべく、2022年、Auxiaを設立。
CEO サンディープ・メノン
Googleで15年以上にわたり、Android、Chrome、Google Playのグローバルマーケティングや、「Next Billion Users」プロジェクト、Google Payなどの事業をリードした。インド工科大学卒、INSEAD MBA(優等)修了。メノン氏は以下のようにコメントする。
Googleで、AIがいかにマーケティングを変革するかを目の当たりにしました。しかし、顧客獲得以外の分野では未だ活用が進んでいませんでした。
CTO ラヴィ・デス
MetaでWhatsApp決済インフラのエンジニアリングリードを務め、20年以上にわたってグローバルな技術開発に従事。インド・RV工科大学を卒業。デス氏は以下のようにコメントする。
既存顧客との関係強化の方が新規獲得よりも遥かに効率的です。にもかかわらず、多くの企業がこの領域におけるAI活用に遅れをとっています。
Auxiaが提供するサービスの主な特長
Auxiaは、既存のマーケティング自動化ツールや顧客エンゲージメントサービスと比べ、以下の3点で明確に差別化されている。
- データインサイト解析エンジン
ファーストパーティーデータから、従来のルールベースでは見落とされがちな複雑な顧客行動のパターンや相関関係を抽出。未活用データに新たな価値を付与することが可能。 - モデル駆動の実験システム
従来のA/Bテストに代わり、複数の機械学習モデルを用いた同時仮説検証が可能。これにより、施策の最適化をスピーディかつ自律的に進められる。 - 連携型AIエージェントによるパーソナライズ
ウェブ、アプリ、メール、SMSなどあらゆるチャネルを横断的に統合し、ユーザーごとの行動に基づいてリアルタイムで最適な対応を実現。
MUIPからの出資と今後の展開
2022年の米国カリフォルニア州ロスアルトスでの創業以来、Auxiaは順調な成長を続けている。これまでVela PartnersやIncubate Fundなどの投資家から資金調達を行ってきた同社だが、今回三菱UFJイノベーション・パートナーズ(MUIP)からの出資を受けることで、さらなる成長加速を目指す。
MUIPからの出資を受けた理由について、メノン氏は次のように説明する。
MUFGは金融サービスにおける深い専門知識とイノベーションへの強いコミットメントを持つグローバル企業です。2024年初頭の私たちのサービス立ち上げ以来、MUFGは貴重なパートナーであり顧客でもあり、当社の成長と成功に重要な役割を果たしてきました。MUIPの戦略的な洞察、グローバルなリーチ、そして金融テクノロジーの発展への献身を考えると、彼らとのパートナーシップは自然な選択でした。
今回調達した資金は、同社のAIパーソナライゼーション技術のさらなる進化と事業拡大に活用される。具体的には、次世代のAIエージェントを開発するためのエンジニアリング人材への投資が最優先事項だ。アナリストとコンテンツAI機能の拡張に加え、新しいAI意思決定エージェントの開発も計画している。
私たちのビジョンは、マーケティングにおけるAIの可能性を最大限に引き出すことです。次世代のAIエージェントでは、より繊細な顧客行動の理解と、より広範なデータポイントを活用した精密な意思決定が可能になります(デス氏)。
事業拡大においては、米国を中心としたグローバル展開を加速させるため、営業・マーケティングチームの増強も進めている。特に注力するのは、金融サービス、Eコマース、サブスクリプションビジネスなど、顧客エンゲージメントとリテンションが収益に直結する業界だ。
協業の初期成果として、すでにMUFGグループ内での実証実験が開始されているという。特に、デジタルバンキングサービスにおける顧客エンゲージメント最適化プロジェクトでは、顧客からの反応率向上と操作ステップの削減に成功している。
現在、MUFGの複数の事業部門と協力し、具体的なビジネス課題に対するソリューション提供を始めています。今後数か月のうちに、これらの取り組みから得られた知見を活かして、日本市場向けのサポートをさらに強化していく予定です(メノン氏)。