資本の新ルールを議論して——AIとブロックチェーンが変える金融の未来

2026.06.10

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GFTN Forum Japan 2026の「Founders Day」で、「The New Rules of Capital-From Policy Reform to Exit」と題したパネルに登壇した。モデレーターはMonex GroupのJesper Koll氏。日本とインドを中心にVC、証券取引所の実務家が集まり、資本市場の構造変化について議論を交わした。以下、パネルで語られた内容と、私自身が考える金融の未来について記しておきたい。

主権・DPI・IPO市場

 パネルでは多彩なテーマが取り上げられた。BEENEXTのHero Choudhary氏は、主権主義の台頭が各国内に資本プールを生み出していると指摘し、インドを起点とした日印・中東・米国への投資回廊の構築を語った。Accion VenturesのRahil Rangawala氏は、インドにおけるデジタル公共インフラ(DPI)の進展がフィンテック革命を加速させていると述べた。10年以上かけて構築されたインフラの果実がいま実りつつあるという話は印象的だった。

東京証券取引所シンガポールの吉松和彦氏は、日本株市場の安定性と構造変化を強調した。香港市場の地政学的リスクを受けて、アジアのスタートアップにとって日本が有力なIPO先になりつつある。上場基準の柔軟さと流動性の高さは、海外のスタートアップにとっても検討に値する選択肢だと私も考えている。

日本の大企業がスタートアップを買収する時代

鈴木伸武(MUFG Innovation Partners President & CEO)

パネルで私が強調したのは、日本の大企業の変化だ。MUIPは現在、6億米ドル規模のCVCファンドを運用し、60社以上のグローバルスタートアップに投資している。

象徴的な動きとして、三菱UFJ銀行が昨年、当社出資先であるマネーツリーを買収した事例がある。マネーツリーは2019年に出資した日本拠点のスタートアップで、創業者は外国人だ。銀行がスタートアップを買収し、そのテクノロジーを内部に取り込むのは、以前では考えられなかった新しい動きである。MUFGグループでは他にも、カンムやウェルスナビ(上場後にTOBで子会社化)など複数のスタートアップを買収してきた。

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さらに最近、MUFGがインドのShriram Financeに20%の出資を行った。かつて日本ではM&Aが敬遠されていたが、最も保守的とされる銀行でさえこれだけの変化を遂げている。ソニーやトヨタのようなグローバル大企業だけでなく、他の日本企業でも同様の動きが広がるだろう。

大企業がスタートアップのテクノロジーを取り込み、自らを変革していく——この流れは今後さらに加速するはずだ。

AIとブロックチェーン——銀行の未来を変えるテクノロジー

 パネル後半の投資領域の議論で、私が最も注目しているのはAIとブロックチェーン、とりわけ生成AIとステーブルコインだ。

この文脈で、Onigiri CapitalのQin En Looi氏の論点は示唆に富んでいた。クリプトはボラティリティが高く機関投資家にとって投資適格ではないが、ブロックチェーンは別の話だという。セキュリティトークン化はブロックチェーンの恩恵を論争なく活かせる領域であり、ステーブルコインについてはグローバルサウスの資本規制がスケールの障壁になるという指摘も的を射ていた。

MUFGでは10年以上前からブロックチェーン技術の実装を進めており、エージェントAIの導入も始まっている。ステーブルコインについても、米国の規制動向を受けて銀行にとって重要な技術になりつつあり、B2CだけでなくB2Bの領域でも大きな可能性を感じている。

具体的に想像してほしい。ソニーやトヨタのような大企業は、世界各地に多様な通貨で資金を保有している。トレジャーリー・マネジメントでは、最適な通貨の組み合わせを日々分析しているが、資金の移動や両替にはコストや時間もかかる。将来的にはAIとステーブルコインの統合により、リアルタイムかつ手数料なしでの資金移動が可能になるだろう。銀行はそうした新しい時代に備える必要がある。 

パネルで語られたテーマは多岐にわたったが、底流にあるのは「資本の流れ方そのものが変わりつつある」という共通認識だった。AI、ブロックチェーン、トークン化といったテクノロジーがその変化を加速させる中、国境を越えた新たな資本の流れと、規制とイノベーションのバランスが今後の鍵を握る。テクノロジーの進化に対して恐れずに向き合い、変化の先頭に立つこと——それが、これからの金融に求められる姿勢だと確信している。

資本の新ルールを議論して——AIとブロックチェーンが変える金融の未来